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「表層筋(アウターマッスル)」と「深層筋(インナーマッスル)」
 
一般的にインナーマッスルは深層にあり、アウターマッスルは表層にあります。
インナーマッスル(ローカル筋)はそのほとんどが1つの関節をまたぐ「単関節筋」です。一方、アウターマッスルのほとんどが複数の関節をまたぐ「多関節筋」です。
その2つは何が違うでしょうか。
 
単関節筋は関節の近くに位置しているため、運動に際して働くだけでなくstabilizer機能に優れています。一方、多関節筋は大きなトルクを産生してダイナミックな運動を可能にします。

股関節の深層筋
 
股関節は球関節であり屈曲―伸展、内転ー外転、外旋ー内旋といった運動だけでなくそれぞれを組み合わせた運動も可能です。
股関節周囲筋をインナーマッスルとアウターマッスルに分けてみましょう。
 
表層筋:大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋、大内転筋、長内転筋、薄筋
深層筋:腸腰筋、小殿筋、上・下双子筋、梨状筋、内閉鎖筋、大腿方形筋
 
代表的な筋でいうと上記のように分けられます。
 
インナーマッスルが機能不全になるとどうなるか
 
単関節筋機能が不全状態

関節というのは前ー後、左ー右と軸の周りを骨が動く構造をしています。立位で前方へ足を挙げると股関節の前方の筋が収縮し、後方の筋が弛緩するのです。この時、対になる片側の筋が硬くなっていたらどうなるでしょうか?
すると、関節中心がずれて骨同士が衝突する「圧縮応力」が発生します。すると、ある方はインピンジメント障害になるでしょう。または、軟骨が消失したり関節唇が損傷する場合もあります。
その他に筋肉や関節包の部分で牽引ストレスが発生することも考えられます。すると「肉離れ」や「腱炎」など引っ張られる応力が原因の障害が発生してしまうのです。
 
関節の周り大部分のインナーマッスルが硬化してしまったらどうでしょうか?
まず、筋肉内の血流は悪くなります。すると筋肉内に疼痛誘発物質が停滞してわずかな収縮で「痛み」を感じるようになります。
 例えば小殿筋は中殿筋と腸骨の間に付いていますが、中殿筋からの圧力がかかった場合、逃げ場がありません。そのまま腸骨に押し付けられた格好となります。大腰筋は下が腸骨と大腿骨なので圧力はかかりませんが、腰から上(体重の2/3)を制御するため相当な負荷がかかります。骨に付着している筋肉は骨付近で酸欠が起こりやすく、大腰筋や梨状筋など骨の受けが無い筋肉は筋腹が施術ターゲットとなります。この時間が長くなれば圧迫による酸欠となり、発痛物質が停滞し炎症→筋緊張という悪循環が始まります。
 

股関節深層筋の機能
  
【筋張力による働き】
深層筋は、関節の安定化にとって重要な役割を担っていると考えられています。深層筋は関節の近くに存在するため、モーメントアームは短く筋トルクは少ない。股関節では大腿骨頸部と長軸方向に走る筋肉が大腿骨頭を上内側に引っ張る力を与えています。その筋肉は梨状筋、中殿筋、小殿筋、外閉鎖筋です。更に骨頭の前側を走行する腸腰筋は股関節の安定化に寄与しています。
 
【関節包、靭帯を介した働き】
股関節の関節包・靭帯には、小殿筋、大腿直筋の反回頭、腸骨筋の一部、内閉鎖筋、上下双子筋、外閉鎖筋が付着しています。これらは運動時に関節包・靭帯が挟み込まれることを防止する役割や、筋張力により大腿骨頭を関節窩に安定させる役割などが考えられています。
 
【感覚器としての機能】
浅層筋よりも深層筋の方が筋紡錘の密度が高い傾向にあります。股関節では大殿筋や中殿筋よりも小殿筋や深部の外旋筋群の方が筋紡錘の密度が高いです。筋紡錘は筋の長さを感じるセンサーであるため、深層筋の長さ変化の情報は生体にとってとても重要であることを意味しています。
 
では浅く刺した方がいいのか深く刺した方がいいのか。木下晴都は坐骨神経痛患者を腰部の深針群と浅針群に分けて効果を比較し、深く刺した方が効くと結論づけました。その比較対照の論文により鍼灸師として医学博士号を受けました。そのメカニズムは75mmの鍼を神経根付近へ至らせることで、神経の軸索反射が起こるとしました。また、ネズミの筋肉へ刺鍼し、どの角度で刺鍼すると筋肉疲労が消えやすいかという実験もしました。彼は坐骨神経痛を梨状筋症候群と傍神経刺に分けて治療する解剖学的な鍼治療を確立しました。
 
ただ注意すべきは深針は内臓を傷つける恐れがあります。そのため「刺鍼事故」や「断層解剖カラーアトラス」「プロメテウス解剖学アトラス」などで中の構造について十分理解を深めます。

 

【体幹の表層筋と深層筋】

体幹の表層筋と深層筋

背骨はジャバラのような構造となっています。一つ一つが関節を成しており、全体として大きな可動性があります。表層筋は面積が大きく脊椎の多くの分節をまたいで付着しています。対して深層筋は椎体の一つ一つを連結して個々の脊椎を安定させています。脊椎の場合、表層筋だけ働くと右図のように背骨が不安定になってしまうのです。
 
また、肩や股関節も表層筋と深層筋があり、表層筋は大きな力を発揮する時に、深層筋は関節の安定や関節運動の制御に大きく関わっています。代表的な筋肉を紹介します。
 
表層筋と深層筋
表層筋:腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腰方形筋の外側線維、胸最長筋の胸部
    腰腸肋筋の胸部
深層筋:腹横筋、内腹斜筋、腰方形筋の内側線維、多裂筋、胸最長筋の腰部、腰最長筋の腰部、棘間筋
    
ここでポイントのなる3筋を説明します。
・腹横筋
腹横筋は7~12肋骨の内面、胸腰筋膜、腸骨稜から横断するように走行しています。体幹の下部をぐるっと取り巻くように走行しているため、この筋の働きによって腰部全体の剛性が高まります。
 
・腰方形筋
腰方形筋は腸骨稜を起始として12肋骨に停止する外側線維と、第1~4腰椎に停止する内側線維に分けられます。外側線維は骨盤挙上、または骨盤挙上ー下制の調整、体幹の側屈に作用します。
腰椎の安定に関与しているのは内側線維です。
 
・多裂筋
両側性に収縮すると腰椎を伸展させ、一側性に収縮すると同側への側屈、反対側への回旋が生じます。多裂筋は背部の深層筋の中でも安定性の制御に重要な筋肉であるといわれています。
 
股関節を動かすということは日常生活ではその隣である体幹も一緒に動いています。体幹の固定性があって、股関節の筋出力が上手く発生できる仕組みになっているのです。
例えば、股関節の外転の筋力が低下していた場合、①中殿筋単独の筋力低下、②中殿筋+体幹筋の筋力低下、③体幹筋の筋力低下
 
このように3通りの可能性が挙げられます。
股関節機能の評価のために体幹の深層筋のチェックは必須になります。