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【変形性股関節症の現状、特徴】
変形性股関節症は原因がはっきり分からない一次性のものと先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などに起因する二次性のものがあります。国内ではほとんどが二次性のものになります。
 変形性股関節症の診療ガイドラインによると、国内の有病率は1.0~4.3%となっています。仮に4.3%ですと東京都だけでも約50万人が罹患していると推定できます。このように珍しい病気ではありません。神奈川リハビリテーション病院の調査によると、男女比は 1: 7.4 で圧倒的に女性が多いです。
 女性に変形性股関節症が多いのは、原疾患になる割合が高いからです。神奈川リハビリテーション病院の調査では股関節疾患の原因の86.6%は臼蓋形成不全と先天性股関節脱臼で占められます。その男女比は1:14~15で女性が多いです。

【股関節症の症状】
1.痛み
初期の段階では重い感じ、張っている感じ、長く歩いた後の疲労感などの症状が多くみられます。また痛みの部位も股関節以外に殿部、大腿部、膝などのことも少なくありません(下図参照)。長く歩いた後、スポーツの後に感じることが多く、女性では出産後に痛みが強くなることがよくみられます。
変形性股関節症の関連痛割合

2.脚長差
脚長差とは左右で足の長さが異なることを意味します。乳幼児期の骨頭変形によって起きることが多く、以前の調査では非手術群で平均1.2cm、手術後群で1.8cmみられました。医療機関では一般的に3cm以内なら問題ないと言われますが、1~2cmの脚長差により歩行の流動性が低下してしまう方が多くいます。
 
3.跛行
歩行時間が長くなると、患者さん自身は疲労と共に「踵がつけていない」「上半身が揺れる」などを気にされる場合があります。その原因のひとつは脚長差による墜下性跛行です。これは患側の股関節に問題が起こり、患側の下肢長が短くなり健側から患側に体重が乗る時に「ドスン、ドスン」と落ちるような歩き方をいいます。
次に股関節や体幹筋の筋力低下により反対側の骨盤が下がるトレンデレンブルグ跛行と上半身を患側に傾けるディシェンヌ跛行があります。そして、痛みから逃れる逃避性跛行があります。
 
4. 関節の可動域が低下する
症状が進行していくと、股関節の可動域は低下していきます。始めは「外に開きにくい」、「あぐらをかけない」などの動作が難しくなり、前方向(屈曲)の可動域が低下すると爪切りや靴下の着脱動作が難しくなります。
 
【股関節症の診断】
医療機関へ行くと一般的には問診とレントゲン、徒手検査により診断されます。最近ではCT,MRI,関節鏡など必要に応じて検査を行います。
ここではレントゲンによる分類を紹介します。
股関節症は前関節症期、初期、進行期、末期の4つに分けられます(下図参照)。
 
1.股関節症の病期分類
 
前股関節症期
臼蓋形成不全や大腿骨頭の扁平化、大腿骨頸部の短縮などの形態変化はあるものの、軟骨は正常に保たれて、関節裂隙の狭小化がない状態を指します。
 
初期
関節裂隙の一部が狭小化(狭くなる)し、体重負荷の負担がかかる部分の骨が白くみえる骨硬化がみられます。骨棘はあっても軽度の段階です。日常生活では椅子からの立ち上がりや歩き始めに痛みが出現します。
 
進行期
関節裂隙の一部が消失してきます。骨棘が存在して骨の一部が空洞化する骨膿胞も出現してくるようになります。日常生活では安静時にも痛みを感じるようになります。
 
末期
荷重部の関節裂隙が消失して、巨大な骨膿胞もみられます。日常生活では強い痛みを生じる頻度が増えてきます。一部の人では痛みが軽減するケースもあります。
変形性股関節症の病期分類

 
2.股関節症の年齢と病期
年齢と病期の調査結果によると、10歳代、20歳代では前・初期が90%以上ですが、30歳代では前股関節症が50%以下となり40歳代では前・初期合わせても50%以下となります。20~30歳代と30~40歳代に大きな変化があります。それから50歳代→60歳代と進行期・末期が増え続け、70歳代以上では90%以上が進行期・末期となります(下図参照)。
股関節症の年齢と病期の比率
 
 

【問診】
問診では、今の痛みの強さや日常生活で困っていることや気になることを聞きます。また、いつから痛みがあるのか、どういう動作や姿勢で痛いのか、も確認します。そして乳幼児期に股関節脱臼の既往があるかどうかも確認します。
医療機関を受診しているようでしたら、どのように診断されたのか、また治療方針についてどのように話があったのかを聞きます。
 

【評価】
①触診、視診
痛む部位の周囲、またはお話を聞いたうえで問題だと思われる箇所がどのような状態なのか手指で押圧して確認します。そして問題部位の皮膚に異常が無いか確認します。
 
②関節の可動域
股関節は前後、左右、回旋と多くの方向に動かすことが出来ます。実際に関節を動かして、その硬さだけでなく、end feelやゴリゴリ音がしないかどうか確認します。
 
③形態測定
左右で足の長さに差があるかどうか、場合によっては脚の太さに左右差が無いかメジャーで確認します。
 
④JOA score
その他に日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA Hip Score)という評価があります。これは疼痛、可動域、歩行能力、日常生活動作などの項目があり総合的な状態を評価できます。全国どこの整形外科医でも知っている評価基準です(下表参照)。

股関節JOAスコア  
Ⅰ 疼痛      
評価  
股関節に対する愁訴が全くない 40 40  
不安定愁訴(違和感、疲労感)があるが、痛みはない 35 35  
歩行時痛みはない(ただし歩行開始時あるいは長距離歩行後疼痛を伴うことがある) 30 30  
自発痛はない. 歩行時疼痛あるが、短時間の休息で消退する 20 20  
自発痛はときどきある. 歩行時疼痛あるが、休息により軽快する 10 10  
持続的に自発痛または夜間痛がある 0 0  
       
Ⅱ 可動域      
評価  
屈曲
関節角度を10度刻みとし、10度毎に1点、ただし120度以上はすべて12点とする
(屈曲拘縮のある場合はこれを引き、可動域で評価する)
( 度)
( 点)
( 度)
( 点)
 
外転
関節角度を10度刻みとし、10度毎に2点、ただし30度以上はすべて8点とする
( 度)
( 点)
( 度)
( 点)
 
       
Ⅲ 歩行能力      
評価  
長距離歩行、速歩が可能、歩容は正常 20 20  
長距離歩行、速歩が可能であるが、跛行を伴うことがある 18 18  
杖なしで、約30分または2km歩行可能である. 跛行がある. 日常の屋外活動にはほと
んど支障がない
15 15  
杖なしで、10~15分程度、あるいは約500m歩行可能であるが、それ以上の場合1本
杖が必要である. 跛行がある.
10 10  
屋内活動はできるが、屋外活動は困難である. 屋外では2本杖を必要とする 5 5  
ほとんど歩行不能 0 0  
       
Ⅳ 日常生活動作      
評価 容易 困難 不可
腰かけ 4 2 0
立ち仕事(家事を含む)
(持続時間約30分. 休憩を要する場合は困難とする. 5分くらいしかできない場合は
不可とする)
4 2 0
しゃがみこみ・立ち上がり(支持が必要な場合は困難とする) 4 2 0
階段の昇り降り(手すりを要する場合は困難とする) 4 2 0
車、バスなどの乗り降り 4 2 0

【変形性股関節症の原因】
 
1.一般的にいわれる変形性股関節症の原因
医療機関を受診すると、まずレントゲン検査を行います。場合によっては血液検査も行うでしょう。採血により炎症反応が分かるからです。問診と検査結果を総合して変形性股関節症と診断されるわけです。これらの検査結果により、患者さんがどの段階の股関節症なのか分かるので、大変有益な検査です。ドクターから「軟骨が減っていますね」と言われた方も多いのではないでしょうか。しかし、この軟骨には痛覚の神経が通っていません。つまり、軟骨が減ったから痛いというのは説明になっていないのです。「炎症反応があったから痛い」との説明なら筋が通ります。炎症とは疼痛、腫脹(腫れ)、発赤、熱感、機能障害の5徴候をいうからです。
「軟骨が減っている」とはその現象をいっているにすぎないのです。
 
2.当院が考える変形性股関節症の原因
変形性股関節症は進行とともに軟骨が減っていくことは説明しました。では、なぜ減っていくのかを考えます。
股関節症の原因疾患として、臼蓋形成不全と先天性股関節脱臼があると説明しました。これは変形性股関節症の多くが股関節の適合が浅いことを意味しています。大腿骨頭に対してお椀の役目を果たす臼蓋が浅いのです。このように浅くなると体重がかかる面積が狭くなるので、局所的に圧力が集中してしまいます(下図参照)。
 
股関節症の形態

 
では、仕方がないのか、と思わないでください。
股関節の関節部分周辺では筋肉が関節の安定に深く関わっています。大腿骨頸部の長軸と一致する筋肉が大腿骨頭を臼蓋の中心に据える役割を果たしています。これに関与しているのは梨状筋、中殿筋、小殿筋、外閉鎖筋なのです。また、腸腰筋が大腿骨頭の直上を走るため、固定化の役割を果たしています。関節の適合が浅いと健常者より深層筋の仕事は増えて、かつこの深層筋に問題が生じると痛みや可動域の低下などの問題が起こりやすくなります。
これらの筋肉は硬化するだけでなく、慢性的に血流不全になってしまうことがあります。すると筋肉への刺激や血流の日内変動により痛みが生じます。
 
この部分においては、ほとんどの医療機関で患者さんへ説明されていません。なぜなら、画像所見だけでは分からなく、整形外科の雑誌や専門書にも記載がないからです。

【一般的に考えられる治療法】
 
大きく分けて、体にメスを入れない保存療法と手術療法に分けられます。保存療法が第一選択肢で、手術は保存療法でも効果が望めないか、日常生活にかなり支障がある場合に考えます。
 
保存療法
①生活指導
まず股関節がどのような関節なのか理解していただき、日常生活動作で対策できる部分を行います。股関節症のレベルにもよりますが、杖の使い方の指導、畳や床への座り方、床から起立のやり方、ベッドやトイレなどの確認、必要に応じて自宅内の手すり設置の検討などを行います。
私は「福祉住環境コーディネーター2級」の資格を有しており、住環境に関する相談は積極的にお受けしています。
 
②運動療法
ストレッチや筋力トレーニングを行います。前股関節症や初期の股関節症のケースでは、この運動療法で痛みが軽快するケースも多くあります。ストレッチはご自身で行うセルフストレッチも併用することで、より効果を高めることができます。表層筋の問題ではこの運動療法で問題解決することも多くあります。
 
③薬物療法
痛みを一時的に緩和させるために消炎鎮痛薬を内服します。長期的に服用すると胃腸障害などの副作用を生じることがあります。
 
④注射
関節液成分であるヒアルロン酸注射や抗炎症作用があるステロイド注射などを行います。一時的に痛みが解消したという報告があります。しかし、効果が無かったという報告もあります。
 
手術療法
①骨切り術
②人工股関節置換術
③関節鏡手術
などがあります。

【当院における治療】
変形性股関節症といっても痛む部位は様々です。方向性として部位別にポイントのなる筋肉を緩めます。
 
鼠径部:腸骨筋、恥骨筋、iliocapsularis muscle
大腿前側:腸骨筋、中間広筋
股関節外側:中殿筋、小殿筋
お尻:梨状筋、腸骨筋
 
詳しくは以下のリンクから各筋肉の治療法をご覧ください。
①鼠径部の痛み 
②大腿前側の痛み
③股関節外側の痛み
④お尻の痛み