原因
股関節の外側が痛い(または重い)という訴えは30代以降の女性に多くみられます。どんな時に痛いかというと「歩き始めに痛い」や「歩いていると痛い」という訴えを多く聞きます。
股関節の外側にある筋肉は小殿筋と中殿筋です。この2つの筋肉のいずれか、又は両方のスパズムがあると歩行時の刺激により「痛み」が起こるのです。
なぜ、歩行で痛みが生じるのか説明しましょう。
下図は歩行動作の流れです。
- 踵接地:通常、踵が一番先に地面に付きます。
- 立脚中期:足裏全体が接地して脚が地面に対して垂直になる時です。
この時に中殿筋と小殿筋が活動し右側に寄った重心を左方へ切り替えします。 - 足尖離地:最後は親指の指先で地面を蹴り出していきます。
立脚中期は反対側の足が接地していません(上右図参照)。上半身の重さは片足で支えるしかなく、臼蓋形成不全の方ですと健常者以上に筋肉の支えが必要になります。
ですから、中殿筋と小殿筋の過負荷やスパズムがあった場合、「痛み」や「だるさ」といった問題が出てくるのです。
評価
- 疼痛部位を圧して圧痛があるか、硬さがあるか確認します。
殿部の外側は体格によっては皮膚から腸骨まで10cm以上の厚みがある方もいます。そのような時は小殿筋に問題があるかどうかは手で圧しただけでは分かりません。このような時は鍼を入れた抵抗感で問題の有無を判断します。 - 股関節外転(外に開く)方向の筋力を確認します。
下図のように横向きに寝てもらい脚を上に上げてもらいます。次に私が緑矢印方向に抵抗をかけて保持できるかを確認します。 - 体幹筋力が低下していないか確認します。
2.の検査で筋力低下がみられたら、骨盤を固定した時の筋力と固定していない時の筋力を確認します。
骨盤固定で筋力良好だが骨盤固定しないと筋力低下→体幹筋力低下、股関節外転筋OK
骨盤固定も固定せずでも筋力低下→体幹筋、股関節外転筋筋力低下
施術
小殿筋
小殿筋は腸骨の上外側面にある下殿筋線と前殿筋線の間から起こる扇形の筋肉です。筋線維は大転子の外側面に停止します。小殿筋は中殿筋の奥に位置しているため、中殿筋のスパズムがあると腸骨に押し付けられるような恰好になり、血流障害が発生しやすいのです。
中殿筋
小殿筋の上に覆いかぶさり小殿筋と同じく扇形をしています。小殿筋とほとんど同じような走行をしていますが、中殿筋が表層で小殿筋は深層にあります。