【基本情報】
医学書院の標準整形外科学(第13版)では、背中の痛みについて具体的な記載はありません。来院した方から、整形外科へ行ったが「骨に異常はなく、痛み止めと湿布で様子見ましょうという対応だった」というような話が多くありました。
【症状】
初期は背中が凝っている、張りがある程度だったが次第に痛くなり痛みの頻度も増えてきます。立ち仕事をしていると痛みが強くなる、痛みのために夜間目が覚めるなど様々な症状を呈します。痛みの部位は右図のように3つのパターンに分けられます。①は肩甲骨間が痛いケース(青)、②は①の下側で脊柱(背骨)辺りのケース(黄)、③は②の外側辺りのケース(赤)です。
【原因】
①辺りの主要な筋肉は上位胸椎の多裂筋、最長筋と大・小菱形筋です。これらの筋肉の緊張により痛みが生じている場合がひとつ、もうひとつは肩甲背神経の絞扼による痛みです。肩甲背神経は左図のように走行しています。肩甲背神経は第4,5頸神経から出て前斜角筋と中斜角筋の間を通ります。この前斜角筋と中斜角筋の間で神経の絞扼が起こります。さらに進むと肩甲背神経は肩甲挙筋の深層を通過します。肩甲挙筋の緊張による神経痛発生の場合もあります。
②の原因筋は多裂筋か最長筋、③の原因は腸肋筋が主な原因筋となります(下図参照)。
【治療方針】
肩甲骨間の痛みに対してはまず、疼痛部位付近と頚部筋の緊張があるかどうか、触診して確認します。触診は硬い筋肉の部位や状態を知る目安になります。多裂筋は深層に位置していますので、骨付近は触診で分からない場合もあります。頚部、胸部の夾脊穴と肩甲挙筋、前・中・後斜角筋の刺鍼がポイントになります。筋肉の緊張が原因のケース、筋肉の緊張による肩甲背神経の絞扼のケースどちらの場合でも3回程度で大部分の痛みは軽快します。