始めに
更年期とは女性の生殖能力が失われていく時期であり、年齢でいうと一般的に45才から55才にかけてをいいます。この期間に卵巣機能が終息する前後を閉経期といいます。
この更年期に身体の不調を訴える女性は約70%におよび、多くの方が経験する不定愁訴です。
更年期障害のメカニズム
更年期になると卵巣の機能が低下して、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が低下します。これらのホルモンが足りなくなると、卵巣から視床下部や下垂体に「卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを出すように」という指令を送ります。
更年期になるまで数十年もの間、このようなメカニズムで調整をしていましたが、更年期になると卵巣機能そのものが低下するため、いくら卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを出して、と指令を出しても卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌は増えません。
このような原因で視床下部や下垂体といった脳内機能が混乱してしまいます。
これらのホルモン異常は血液中のホルモン量を測定することで分かります。
黄体ホルモン↓ 卵胞ホルモン↓
黄体形成ホルモン↑ 卵胞刺激ホルモン↑
このような状態でしたら、ホルモン異常が疑われるため婦人科の医師と今後の治療方針について相談しましょう。
ただし、上記のホルモン異常は更年期障害の約40%にみられ、60%の人は「異常なし」です。
ホルモンに異常が無ければ、更年期障害の薬を服用したり対処療法をしても根本的な改善は難しくなります。
このように婦人科での治療でも奏効しない場合、「自律神経系」が原因の可能性大です。
また、この年齢期に起こる夫や子供に対する不満、身体的容姿の衰退、人間関係や職場でのストレスなど、様々な要因による精神的ストレスも原因となる場合があります。
主症状
- 自律神経系
熱感、寒気、のぼせ、冷え性、動悸、発汗異常、頻脈 - 運動器系
筋肉痛、関節痛、肩こり、腰痛、疲労感 - 精神、神経系
頭痛、頭重、めまい、不眠、耳鳴り、憂うつ、恐怖感、焦燥感、記憶力減退 - 消化器系
胃痛、胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、口内乾燥 - 泌尿器科系
下腹痛、頻尿、など
上記の中で頻度の高いものは、憂うつ、肩こり、腰痛、熱感、頭痛、腹痛、のぼせ、発汗などです。
治療法
鍼灸適応はホルモン異常がなく、前項で述べたような症状がある時です。
ホルモン異常以外の要因でまず疑うべき問題は「自律神経系」の異常です。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」により成り立っています。この2つは1日の中でもバランスをとって働いています。これは意識して働けない機能、例えば脈拍、血圧、瞳孔、胃腸の働きなどです。
交感神経、副交感神経とも背骨にそって走行しています。なかでも副交感神経の司令塔は首と仙骨にあります。首の筋肉がこり固まると、この副交感神経の働きが上手く出来なくなり、自律神経内でのバランスが崩れてしまい、前項で述べた症状が表出します。
ですから、基本的には首の筋肉に鍼を入れて緊張した筋肉を緩めます。