疼痛は生体を守るための警告シグナルとして必要なものです。しかし、疼痛が持続すると自律神経のバランスが崩れ、これがストレスとなり全身に問題が波及し精神面にも影響するといった悪循環に陥ります。
近代社会においては、優れた鎮痛薬が開発されました。また、局所麻酔剤を使用して神経ブロックを行い救われる人々もいます。しかし、痛みを一時的に忘れさせる効果しか期待できないことも多いのです。慢性疼痛に悩み路頭に迷う人々が多くいるのが現実です。
東洋医学の歴史は二千年以上前にもおよび、150年前までは主流であった医学です。当時は神経ブロックや鎮痛剤が無くても痛みや体の不調に悩める人々を救ってきた実績があります。「疾患を体質や外環境まで考慮して根本的に治療しよう」という概念は今の時代でも学ぶ点は多いはずです。
ただし東洋医学の基礎理論は難解で非科学的です。また生活環境はこの100年でも激変しています。したがって、古典的な東洋医学を現代医学的に解釈して治療にあたる必要があると考えています。さらに近年解明されてきた詳細な組織学や人間工学を取り入れ、解剖学・生理学・力学を基に治療方針を立てます。
鍼灸院はその店により大きく施術方法が異なります。大きく分けると①経絡からの考え方、②中医学による考え方、③現代的な考え方の3つになろうかと思います。それぞれ特徴がありますが、肩が痛い、腰が痛いなどの痛みの問題、どうしようもなく筋肉がこっている、張っているといった問題は③の考え方で多くを説明できます。
約2000年前に中国で鉄の鍼が使われ始めたとされています。当時は身体の構造や機能が詳しく分かりませんでした。そんな中で体に鍼を入れたのですから事故があったことは想像に難くありません。しかし、現代では組織の構造、機能が詳細に解明されてきました。安全な治療ができる時代になったのです。